2020年春には、新築住宅を含む建物エネルギー性能の適合と開示が義務化されると囁かれています。気候変動抑制は待った無しの状況にあり、住宅分野での温室効果ガス排出抑制には大きな期待が寄せられています。このような背景から、市場に出回る住宅のエネルギー性能を引き上がるための色々な誘導政策が打ち出されています。何れも「断熱」「省エネ」「創エネ」という三分野の方策の上手な組合せが求められており、「断熱」策に関しては高気密化や連続断熱層の配置等も含めて、特段の高性能化を求めるものではありません。
一方で、新築住宅の活況が伝えられる米国では、「建設地の気候条件に準拠した断熱」性能の革新的向上を前提としたパッシブハウスが、寒冷地・蒸暑地を問わず全米各地で住戸数が毎年倍増する勢いで普及しており、外皮の高断熱・高気密化に基づいた高性能住宅が注目されています。翻って我が国の住宅市場では、高性能住宅は未だ高嶺の花で、屋内空間の(温熱)快適性を置き去りにしランニングコスト抑制だけに特化して、節約・省エネが議論されることも散見されます。
当法人が目指すところの『確かな外皮の高断熱・高気密化技術に基づいた高性能住宅』を正しく理解し指導する専門家や工事技術者をより多く世に送り出すために、CPHC?・ビルダーズ合同初級講習会第1回講習を以下の要領で実施します。この合同初級講習会は、PHIUS公認のCPHC?講座やビルダーズ講座を、より多くの建築士や工務店関係者に受講戴くために、その基礎知識を再確認し、また補強戴くために準備・提供するものです。
合同初級講習会第1回では、『確かな外皮の高断熱・高気密化技術』の基本となる外皮の高気密化と気密性能検証法、および連続断熱層でカバーできない熱橋部の影響最小化のためのWindowsアプリケーションThermを用いた数値的評価法について解説し、簡単な実習をして戴きます。
第1日は、国内での一般測定法(9.8 Pa(1mmAq)減圧時気密性能)だけで無く、欧米で広く推奨されている高圧力差下での加圧・減圧測定法(50 Paでの加圧・減圧平均気密性能)について解説します。測定方法だけで無く、50 Paでの平均性能の必要性、PHIUS+ 2015で求められている外皮の単位面積毎の許容漏気量の実情、どのような箇所で漏気が発生し易く気密性能を向上させるにはどうすれば良いか等について講習します。次に、解体予定の木造軸組家屋に移動して測定実習し、また漏気箇所の特定や気密化の方法について体験学習戴ける非常に貴重な機会を提供します。
第2日は、連続断熱層で防げない熱橋部のエネルギー損失や湿気コントロールへの影響の最小化を目的とする、2次元非定常熱伝導の有限要素解析が可能なWindowsアプリケーションTherm(https://windows.lbl.gov/software/therm 7.6.01版、米国ローレンス・バークレー研究所が無償一般公開)の初級講座です。アプリケーションが基づく数学的考え方、インストール法、使い方等について概説し、インストール作業後に簡単な応用事例の計算を体験します。熱橋対策の秘密兵器となるThermの使い方を習得し、その手間を知ることは、必要十分な連続断熱層配置による熱橋回避の重要性を理解し、熱橋部のエネルギー損失や湿気コントロールへの認識と配慮を深めることが可能となり、強力な抑止力として活用戴けるものと信じています。
工務店関係者や建築士の皆様の多数のご参加をお待ちしています。
講習会名 | NPO法人 PHIJP主催 CPHC?・ビルダーズ合同初級講習会 第1回 「加圧・減圧気密測定と2次元熱橋計算アプリケーションTherm入門」 |
開催日時 | 1日目:2018/10/12 (金) 13:30(開場13:10) |
2日目: 2018/10/13 (土) 09:00~12:00(開場08:40) | |
集合場所 | 1日目:大宮駅西口 |
2日目:ソニックシティビル8階 802会議室 (埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-7-5) http://www.sonic-city.or.jp/?page_id=178 |
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費 用 | 会員6,000円/日、一般10,000円/日、交流会費4,000円(会員・一般) |
定 員 | 40名(申込み先着順) 第2日講習では、Windows7以上が動作するノートPC(数値演算機能有、メモリ8GM以上)のご持参が必要です。 |
一日目予定スケジュール(加圧・減圧気密測定講習)
時刻 | 演題 | 登壇者氏名(敬称略)/所属 |
13:30 | ご挨拶 | 蓜島一弘/事務局長・ハイシマ工業(株) |
13:35 | 講義「建築外皮の気密性能の国内・外での測定法」(質疑応答10分込) | 芝池英樹/理事長・京都工芸繊維大学 |
14:30 | 休憩 | |
14:40 | 講義「建築外皮の漏気特性と高気密化の要点」(質疑応答10分込) | 芝池英樹/前出 |
15:35 | 実習家屋へ移動 | |
16:10 | 実習「在来木軸家屋の気密性能測定」 | |
16:50 | 実習「漏気箇所の特定と対策」 | |
17:20 | まとめ | 林和義/理事・ (株)ハヤシ工務店 |
18:30 | 交流会(講義や実習時に質問できなかったこと等の自由討議) |
二日目予定スケジュール(2次元熱橋計算アプリケーション「Therm」講習)
時刻 | 演題 | 登壇者氏名(敬称略)/所属 |
09:00 | ご連絡 | 蓜島一弘/事務局長・ハイシマ工業(株) |
09:05 | 講義「熱橋評価の考え方とThermの基礎と応用」(質疑応答10分込) | 芝池英樹/理事長・京都工芸繊維大学 |
10:10 | 休憩 | |
10:20 | 実習「Thermのインストールと使い方」(質疑応答10分込) | 芝池英樹/前出 |
10:50 | 休憩 | |
11:00 | 実習「Thermを用いた熱橋計算と結果の使い方」(質疑応答10分込) | |
11:45 | 総括「CPHC?・ビルダーズ合同初級講習会の今後の活動予定」 | 林和義/理事・ (株)ハヤシ工務店 |